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資料:相互影響に関する考察

 実験のある段階で、チショルム博士は、子供達が下記のような状況の時、どのように振舞うかビデオに録画した。

・両親がいる時
・両親が不在で、見知らぬ人間が一人いる時
・見知らぬ人間が帰った後、両親が戻った時

 ビデオは、遅い年齢になって養子となった子供達が、他の二つのグループよりも、より不安定な愛着パターンを示す傾向を明らかにして見せた。このグループは特に、他の二つのグループが示したより類型的な不安の愛着スタイルと違って、異常な、烈しい、非定型的な形態の愛着を示した。

 この非定型的なスタイルの愛着表現を示した比率は、非養子の子供達が17%、早期に養子となったルーマニア人児童が11%、遅い年齢で養子となった子供達は52%であった。

 二つの定型的な不安愛着表現とは、(1)防御的ないし不安定、(2)高圧的ないしアンビバレント(合矛盾する感情、両面価値)である。不安定な幼児は擁護者を避ける傾向があり、感情を表さず、養護者がその
場を離れるとよりリラックスするように見える。高圧的な幼児は、養護者がその場を離れると悲しそうになり、彼らが戻ると、自分を放っておいてどこへ行っていた、という怒りを表す。また多くのルーマニア人児童が示した非定型的スタイルの愛着表現は、上記の二つの基本的主題の変形である。

 その中には、「子供が親を世話しているように見える」非定型的不安定タイプ、「子供が防御的態度と高圧的態度を交互に繰り返す」防御-高圧タイプ、「取り止めのない、なんでもあり式行動」の包括的不安定タイプがある、とチショルム博士は言う。

 博士はさらに続けて、「養親へのアンケートでは、遅くに養子となった子供達はまた他の二つのグループと比べて、最近、愛着障害判定基準として使われている無差別的友愛表現において高い指標を示した。このような子供達は、養護者の期待に反して、何の警戒心もなく見知らぬ大人に話しかけ、抱きつき、キスさえしようとする。」

 この行動は、人間関係の中でアイデンティティを形成するための基本的な養育者を持ち得なかった結果であると断定されている。この空白を埋めるため、子供達は、優しそうな人物なら誰にでもくっついていく事になる。

 子供が養子となった年齢についての考察に加えて、チショルム博士はまた、子供の愛着パターンに影響を与えたと思われる別の二つの要素を考察した。養親の特性が一つ、いま一つは子供が例えばどれくらいの期間孤児院にいたか、というような施設での生活状況、あるいは養子となった時の身体的条件である。

 博士の調査によれば、愛着が不安定なルーマニア児童の養母の多くは、愛着の安定した子供達の場合より、低レベルの教育しか受けておらず、社会経済的に低い地位にあった。同調査の対象となった養親の中でも、このような親は他の親より多くのストレスを訴えた。

 チショルム博士にとって、この調査結果は一種の出口のない、無限の環を表している。そこでは、愛着不安定の子供は、どうやって助けを求めれば良いかを知らず、また既に危険な状態である親は子供の行動によってよけいストレスを増大させていく。この親のストレスに対して子供はまともに反応せず、かくしてこの繰り返しが延々続く。

 さらにチショルム博士が調査した所によると、施設の変数(施設毎の差違)自体は、子供が愛着不安定と
なるかどうかを占う要素ではない事が分かった。「それよりも、(親子の)相互影響の効果が作用して、つま
り、初期の愛着不安定と後期の子育てによる変数が結合し、現在の愛着障害の問題を悪化させている」と博
士は語る。

問題を難しくしているのは、はたして誰なのか?

 デラウェア大学のメアリー・ドジエール博士とK.チェース・ストーバル博士が、チショルム博士やその他の愛着障害研修者の調査結果を意義づける可能性のある研究を行っている。

 研究の詳細は、10組の養母とその幼児の日常生活における相互作用の分析である。調査の結果、月齢8ケ月以上の年齢になって養子となった幼児達は、例え養母が安定した愛着スタイルを取っていても、最も多く愛着障害の問題を起こした事が分かった。これまでの調査では、愛着の崩壊した乳児は6ケ月から8ケ月の時に問題を起こすとか、1歳の時に始まるとか推定されていた。

 同研究チームは、養母達に育児日記をつけてもらうようにし、悲しい出来事に対する幼児達の反応と、その悲しみに養母達がどう対応したかを記録させた。また同チームは養母達の育児スタイルの格付けを、養母自身の未解決な喪失感やトラウマに応じて「自主的・安定的」、「冷淡」、「不安定・危ない」の三つに分けた。

 この6ケ月から1歳6ケ月の乳幼児達は、養子になった年齢が高ければ高いほど、より烈しい愛着障害の問題を示した。母親が「自主的・安定的」と判定された場合でも、である。

 ドジエール博士とストーバル博士はさらに、いかなる状況であれ、例え子供達が自分を避けようと、かんしゃくを起こそうと、やさしく対応してきた母親の子供は、最も安定した愛着を示す事を発見した。「そんな母親の振舞いは、子供達にとって一種の治療として作用するのです」と、ドジエール博士は語る。

 児童問題研究者である、バージニア大学のロバート・ピアンティ博士は、このドジエール博士の研究と実験を、長らく求められてきたものであるとして、賞賛している。

 養母と幼児の日常生活における相互作用、あるいは初期の愛着障害と後期の養護スタイルが交差する点についての評価や研究は、まだ端緒についたばかりである。

 ドジエール博士は語る。「調査が明らかにした事のひとつは、(養親は)安定した人物である、というだけでは不充分なのです」

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